ノアールとセピア 短いお話、第五夜 とりかご男

とりかご男

とりかご男は、ぼそぼそと
ひとりごとか、聞いているのか
つぶやくように言うのです。
「青い鳥をさがしてほしい」
「青い鳥がいたころは、僕は、あんなに幸せだった。」
「青い鳥がいたなら、どんなに幸福になれるだろう」
紳士のセピアは答えました。
「青い鳥ならそこにいる、ほら、君の心臓あたり
それから、目の前にも飛んでいるじゃないか」

とりかご男は、聞いているのか、ひとりごとか
繰り返し言うのだった。
「青い鳥をさがしてほしい」
「青い鳥がいたころは、僕は、あんなに幸せだった。」
「青い鳥がいたなら、どんなに幸福になれるだろう」
セピアは、もう答えない。

さっき、とりかご男のひざのところにいた、黒猫ノアールを
また見失ってしまったのです。

船をだして、ふりかえると、鳥かご男は、塔のように
じっとして、遠くをみているのでした。